REVIEW
50年以上、世界をクールに観察し描写してきたワイズマンだが、世界中でデモクラシーが危機に瀕する中、ついに極めて「政治的」な映画を撮った。ただし、大巨匠が繰り出したのは「告発」や「批判」ではなく「祝福」である。撮影時88歳。彼は実は熱い人だったのだと、僕の胸も熱くなる。
想田和弘
映画作家
“すべての声を聞く”ことを、はなから諦めない人たちが写っていた。
その姿を押し付けがましく提示しない。一人の訴えを、共に解決に尽くす時間を、街の実景と同じよう、そのままに見る・聞くことへと私たちを促す。“すべての声を聞く”ことを、作り手も信じているからだと思った。
小森はるか
映像作家
市民と行政があらゆる問題について各所でガチンコの対話をしている。面白い。こんなに政治が近いなら誰もが政治に興味を持つのではないのか?これを観た日本の若者がたくさん政治家を目指し始めるという希望さえ持つ。
古舘寛治
俳優
ボストン市庁舎のウォルシュ市長やスタッフの活動を細かく見ることができ、市民に寄り添う市民のための姿勢がとてもよく伝わりました。このドキュメンタリーから私たちも多くを学ぶことができると思います。
それぞれのシーンの合間に映される街の風景は、ボストンの歴史や多様性を表していて、ボストンに留学していた頃を思い出し、とても懐かしく感じました。
関根麻里
タレント
格差や差別と戦い、「市を変えて国を変えよう!」と訴えるボストン市長たちはアメコミ以上のヒーロー。
保健所や図書館や職員を減らし、非正規職員をコキ使い、カジノで儲けようとする地方自治体とは大違い。日本よ、これが市政だ!
町山智浩
映画評論家
公がどんどん細るこの国で、改めて公の役割を考えた。
誰のために、何のために政治や行政は存在するのか。
その全てはまさに「聞く」こと、「対話する」ことから始まる。
浜田敬子
ジャーナリスト
ドキュメンタリーという手法が持つパワーに圧倒されました。
フィクションではないからこそ、日常の中の民主主義のリアルさが地響きのように伝わります。
日本の政治や行政の在り方と比べると、更にいろんなことを考えさせられます。
中林美恵子
早稲田大学教授
日本の自治体の仕事と驚くほど似ている。しかし、市役所の仕事は市民からは見えにくい。
それを伝えるため、様々な場面で市民に語り掛けるボストン市長に共感と感動。
越直美
元大津市長
フレデリック・ワイズマン監督の集大成的な一本でした。
この映画で語られる「違いは分断を生まない」という意思に心から賛同します、
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 審査員講評(抜粋)
必見の作品。フレデリック・ワイズマンは、アメリカ映画界で最も優れた社会学的な映画監督だ。90歳にしてなお、唯一無二のノンフィクションの逸品を生み出し続け、最新作『ボストン市庁舎』も間違いなくそれに当てはまる。行政とコミュニティの活動を描いた広大なパノラマ。それをまとめるストーリーテリングの力を称え、それを見事に表現している。
Nick Schager
The Daily Beast
皆がこの作品を見れば、アメリカはもっとよくなるだろう。自身への議論をも内包したボストンの豊かなタペストリー。半日かけて民主主義を実践する活気あふれるイベントだ。
David Ehrlich
IndieWire
ワイズマンは、『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』や『ニューヨーク、ジャクソン・ハイツへようこそ』で描いたような東海岸の活気に満ちた多様で都会的なコミュニティに回帰し、そのエネルギーは明白だ。おそらくワイズマンのドキュメンタリー史上最も時事的な作品だろう。
Lee Marshall
Screen International
圧倒的。洞察力に優れ、心奪われる。
Keith Uhlich
SLANT
傑作。市民社会と公益の探求。ワイズマンは、あの笑える台詞(「英語で最も恐ろしい言葉は次のとおりです。「私は政府から来ました、そして私は助けるためにここにいるのです。」―ロナルド・レーガン)とその言葉の持つ残酷さに―会議ひとつずつ、施設ひとつずつを通して―強力な反論となる超大作で応えた。本作は最も優れた抵抗の芸術である。
Manohla Dargis
The New York Times
穏やかながらスリリングな観察力。ワイズマンはお役所仕事の過程をある種の詩に変えて、統治のありふれた慣用句の中に、喜劇と深遠さを共に見出している。『ボストン市庁舎』は、政治キャンペーンの美辞麗句を越え、民主主義とはどのようなものなのか力強く正確に説いている。
A. O. Scott
The New York Times